今回は、声の業界でよく使われる「返し」の重要性について、ナレーター視点で解説していきます。
そもそも「返し」とはヘッドホンなどからリアルタイムでモニター(チェック)している、マイクなどの機材を通した自分の声の事を言います。
「自分の声を聴きながら喋る」というだけの話なのですが、この「返し」には意外な落とし穴が…
ボイストレーニングの一環で、返しを聴きながら歌を録音していたナレーターMさん。
声を張ったロングトーンの発声がどうしてもうまくいかない。普段の練習ではできることなのに…なぜ??
色々と試したところ、「返しの音量を下げてもらう」「ヘッドホンを片方外す」ことで解決できました。
どうやら、大きめの音で返しを聴くことで、無意識のうちに発声にリミッターがかかってしまっていたようです。
Mさんはこの時初めて「返しの音による影響」を実感しました。
普段のナレーション収録時には、当り前のように自分で丁度いい音量に調節していたので、そもそも返しが大きかったり小さかったりする影響について考える事すらなかったのです。
そこで複数のナレーターに、返しの音量をどのくらいにしているか聞いてみると…
それぞれ様々な理由で、大音量だったり小さめだったり音量設定はバラバラ。またモニターするヘッドホンもスタジオ備え付けのものだったり、自前のイヤホンだったり、必ず左耳だけで聞く、必ず右耳だけで聞くなど。
「現場やVTRによって変えている、返しを0にする事もある」というプレイヤーもいました。
とある売れっ子ナレーターが「オンエアを聴けばそいつの返しが大きめか小さめか分かるんだよね…」と言ったという噂も。
それほど、返しの音量の調整が繊細なプレーに影響しているということなのでしょうか…!?
個人差はありますが、声の返しによる発声への影響は少なからずあります。
「そ、そうだったのか…!」という皆さんも
「そんなの常識だよー」という皆さんも
いろいろ設定を試すことで、自分の声やプレイの特性に応じたベストなモニター環境を改めて探ってみてはいかがでしょうか。
サンプル収録でも、ぜひ細かな調整を試してみてくださいね。